2020.01.21 Tuesday

原稿用紙ほぼ3枚分の小説==孫いらね

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    JUGEMテーマ:小説を書くために


    カメおばあさんとツルおじいさんの住む農村地帯には、以前からリサイクル会社(以下RCと略)を名乗る電話がかかっていました。カメおばあさんと仲よくしていた、トキおばあさんの孫は数年前おれおれ詐欺に加担し、逮捕されていました。その被害に遭ったのはトキおばあさんの親戚で、貯金200万円を全部受け子に渡してしまったのでした。

    トキ はいはい。
    RC こちらリサイクル専門の会社です。そちらで不要品がありましたら買い取りいたしますよ。

    トキ リサイクル会社?不要品?
    RC ええ、不要品を買い取る会社です。

    トキ 買い取るの?
    RC ええ、買い取ります。もう着ない着物とか洋服とか、金の指輪とかネックレスとかございますか。

    トキ 買い取らなくてもいいんだけど、引き取ってもらいたいものはあるな。
    RC それはどういったものでしょうか。一度見に伺ってもよろしいですか。

    トキ 知り合いのばっぱにうーんと迷惑かけたうちの孫を引き取ってけろ。
    RC 孫?お孫さんですか?それはまたどうしてですか。

    トキ 孫はおれおれ詐欺の仲間だったんだけど逮捕されたんだ。うちの近くのひとり暮らしのおばあさんから有り金200万円騙して取っていきやがったんだ。
    RC 有り金200万円ですか。ひどいですね。

    トキ そのばっぱはすっかり気落ちして、何もしゃべらなくなってしまった。今は精神病院に入院してんだ。
    RC 精神病院に入院ですか。
     
    トキ その孫いらねから、おたぐで引き取ってけろ。
    RC お孫さんはどこにいらっしゃるんですか。

    トキ 北海道の刑務所だ。出所したら引き取ってけろ。
    RC 人間は無理ですよ。

    トキ 頼むよ。孫の両親はそのせいでここにいられなくなって、遠くに引っ越したんだ。
    RC いやおばあさん、人間はだめなんですよ。

    トキ なあ、リサイクルだの金だのって言って、結局は安く買い取るんだろ。年寄りだってそのくらいのことはわがんだぞ。
    RC いえ、そんなことはありません。金は高く買い取りますよ。

    トキ ほお、うまいごと言って騙すんだべな。
    RC 騙したりしませんよ。きちんとしたリサイクル会社ですよ。

    トキ きちんとした、だって?騙す人はみんなそう言うんだ。
    RC 不要品がないようでしたら失礼します。

    トキ ちょっと待て。あんた、電話いっぱいかけて、引っかかった相手の家に行くっていう仕事だろう。
    RC 引っかかったなんて人聞き悪いですね。では。

    トキ 待て、最後にひとつ言っておく。そんな仕事やめろ。営業すんなら歩いて汗かけ。電話かけは汗かかねえべ。
    RC そんな仕事やめろって……。

    トキ 辞めろ。わがったが!
    RC ……。

    トキ 辞めろ!
    電話はここで切れました。
                         んではまた。
    2020.01.20 Monday

    原稿用紙ほぼ3枚分の小説==しなびた金2の2

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      JUGEMテーマ:小説を書くために


      カメおばあちゃんはツルおじいちゃんと二人で農村地帯に暮らしている。近隣は高齢者ばかりで、畑仕事をしたり、不定期に地域で開かれる昼食会やお茶のみ会に参加したりで、穏やかな日々を過ごしている。そんな農村地帯にリサイクル会社(以下RCと略)を名乗る電話がかかり始めた。

      カメ はいはい、どなたさん?
      RC お忙しい時間にすみません。リサイクル会社の者ですが。

      カメ サイクル?
      RC リサイクルです。いらないものとか使わないものがあったら買い取りしています。

      カメ いらねえもの、使わねえもの?
      RC はい、そうです。もう着なくなった着物とか洋服とかありませんか?

      カメ ほだものねえな。
      RC そうですか、ではアクセサリーはどうでしょう。

      カメ なぬ、悪性?悪性って?
      RC 悪性じゃなくてアクセサリーです。金の指輪とか金のネックレスとか。

      カメ なぬ?チン?
      RC あ、チンじゃなくて金ですよ、金。ゴールドです。

      カメ チン?ゴールド?駅前のパツンコ屋か?
      RC パチンコじゃなくて指輪とかネックレスとかです。金の指輪とか。

      カメ はあ?ツンツン?オレ女だぞい?
      RC いえ、ツンツンじゃなく金です。

      カメ んで、おらいのツルじいさんのツンツン?
      RC いえおじいさんのツンツンじゃなくて指輪とか。

      ツル なぬや!オレのツンツンがどうしたって?
      カメ じいさんのツンツンいらねのかって。

      ツル いるよ!おれまだ使うってば。
      カメ 何さ使うんだ?

      ツル なぬって、しょんべん足るとき使うべ。
      カメ そうが、まだ使えんのが。

      カメ あのね、まだ使うんだど。
      RC あのおばあさん、おじいさんのツンツンじゃなくて、指輪とかネックレスとかないですか?

      カメ ゆび、ああ、指輪かあ、あったんだ。でも畑仕事していてなぐしたんだ。おらの畑さ指輪何個も埋まってんなあ。
      RC 畑仕事していてなくしたんですか?探したらあるんじゃないですか?

      カメ あっかもわがんねえな。あんだ探してみろ。
      RC え、いいんですか?

      カメ いいど。ただな、肥料代わりにオレらのクソ随分まいだから少しくせえかな。
      RC え、クソまいたんですか?

      カメ んだ、クソまいだ。全部クソまいだ。
      RC クソまいでない畑はほかにありますか?

      カメ ねえな。
      RC えーっと検討してまた電話しますね。

                  おみょうにちはちょびっとうるっと話
      2020.01.19 Sunday

      原稿用紙ほぼ3枚分の小説==しなびた金2の1

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        JUGEMテーマ:小説を書くために

        数年前に未亡人になり、実母は一人暮らし。年齢は80代半ば。長女の私は車で20分の距離に居住。弟たちは遠居のため、長女の私が実母を買い物や病院などに連れていきます。
        実母の難点は寂しいがために、相手が誰ともわからない電話に受け答えしてしまうこと。
        今日は病院に行き、実家で昼食。食後にコーヒーを飲んでいると、実母が話し始めました。

        実母 この間ね、リサイクル会社から「不要品はありませんか」って電話がきたんだよ。「いらない洋服とか着物はないか」とかしつこかった。
        長女 お母さん、何て答えたの。

        実母 そんなのないって言って、はいはいって話を聞いていたらさ、最後は「金はありませんか」って。
        長女 やっぱり、そうきたか。

        実母 「金の指輪とかネックレスとか、もう身に着けないものとかありませんか?」って。以前に売ってしまって、もうないよって言ったんだ。
        長女 本気にしたかな。

        実母 しないしない。「引き出しとかにまだあるかもしれませんよ」だって。
        長女 うわ、危ない。

        実母 とにかくないって言ったんだけど、それでもしつこいんだ。「一度伺って、見てみましょうか」って。
        長女 うわあ、そうくるのか。

        実母 しつこいからさ、からかってやることにしたんだ。
        長女 なんて?

        実母 あ、古い金ならあったけど、古いのはだめだよねって。
        長女 古い金?

        実母 ハハハ、古い金だよ。
        長女 それは何?

        実母 向こうは「古くてもいいですよ。ぜひ見せてください」って。
        長女 わあ、しつこいね。

        実母 しつこかったけど、母さんも負けずに、古くて汚いからだめだって頑張った。向こうは「古くて汚くても大丈夫ですよ」って食い下がってきた。
        長女 そんでそんで?

        実母 いやだめだ。古くて汚くてしなびてんだって言った。
        長女 しなびてる?

        実母 うん、そしてね、古くて汚くてしなびてる金だしね、それにもう燃やしちゃったんだって言ったの。
        長女 燃やしちゃった?

        実母 そしたら向こうはね「え?燃やしたんですか?」って不思議そうに聞いてきたんだ。
        長女 金は燃えないでしょ。

        実母 電話の向こうの若い男性に言ったんだ。「うちにあったのは古くて汚くてしなびた金だけど、あんたは若いからピカピカ。金ピカだよね」って。
        長女 あんたはピカピカ?それって……。

        実母 わかった?亡くなったとうさんの話をしたんだよ。
        長女 いやだー!母さん!エッチ!

        実母 若い男性は「あ、若いから金ピカって……えー!そういう意味ですか!」って。「お母さん、面白い!グッジョブ!」って言ってゲラゲラ笑ってた。
        長女 グッジョブ!母さん、さすがだね。その話、もうネット上に載っているかもね。

                       またおみょうにち!
        2020.01.18 Saturday

        原稿用紙ほぼ3枚分の小説==自動運転の車3の3

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          ディーラーの話では「自動運転の車に買い替えたい、いつ発売されるんだ」といった問い合わせがかなりきていて、「いつなんだ!いつなんだ!」と急かす老人たちに頭を悩ませているとのこと。

          亜子 義母さん、ディーラーに連絡しましたよ。明日カタログや申込書を持って説明に来てくれるそうです。
          義母 あらそう。あんたにしては仕事が早いじゃないの。高卒でもそのくらいできんのね。んで、「じいらあ」って何?

          翌日

          亜子 義母さん、ディーラー(以後DLと略)さんが来ましたよ。車屋さんですよ。
          義母 じいらあって車屋さんのことなのね。あんた、わざと難しい言葉使ったんでしょ。やな人ね。

          DL 失礼します。三本自動車販売の合田と申します。このたびはお電話いただきありがとうございます。
          義母 合田さん、よろしくね。嫁から聞いたと思うけど、自動運転の車を買いたいの。どこでも運転できるよね。

          DL いまのところは高速道路だけの予定ですが、じきに一般道もそうなると期待しています。
          義母 ほらね、あたしの言ったとおりでしょ。一般道路もすぐ自動運転できるようになるんでしょ。

          DL すぐかどうかはわかりませんが、期待はしています。
          義母 ほらほら、いい感じじゃないの。

          DL それで自動運転の車の購入申し込みに際していくつかチェックがありますが、よろしいですか。
          義母 ええ、いいわよ。

          DL 自動運転の車はオーダーなので身長と腕と足の長さを計測します。私が乗ってきたこの車の運転席に座ってください。メジャーでおおよそを測ります。
          義母 あ、あら、そう。よっこらしょっと。

          DL 腕の長さは既存サイズで十分ですね。身長が160センチに対して足の長さは60センチ、短足ですね。特別仕様の車になるのでお値段は割高になります。
          義母 た?短足?あたし、足が短いってこと?

          DL はい、足が短いですね。アクセルやブレーキに足先が届かないと運転に大きな支障となります。お嫁さんくらいの足長さんだといいんですけどね。足が短い人はその辺を注意しないといけないです。
          義母 あ、足が短いってちょっと失礼じゃないの。

          DL すみません。次に視力とメガネの話ですが、白内障がおありでしょうね。
          義母 え、ええ、でも目薬つけています。

          DL 白内障の手術を受けたほうが絶対いいです。手術したらメガネも白内障バージョンに買い替えてくださいね。
          義母 白内障の手術?メガネ買い替え?

          DL 運転は同時に近くも遠くも見るので、目の健康はとても重要です。それとうわまぶたが随分おおいかぶさっているので、その手術も勧められるでしょう。うわまぶたが下に垂れて、のれんみたいになり、モノが見えにくくなるので、運転にはとても危険です。
          義母 うわまぶたの手術ですか?

          DL 体調の良い状態で運転するにはそういう手術が必要ですよ。
          義母 でも、自動運転だから白内障でも関係ないじゃないですか。

          DL 自動運転でも車の周囲は常に目視していないといけないですよ。運転は目を酷使する作業ですからね、ぜひご検討ください。それと恐縮ですが、聞きにくいことをお尋ねします。
          義母 は、はい、どうぞ。

          DL あの、尿漏れしますか。
          義母 え?尿漏れ?ちょっと、そんなこと聞くの?

          DL 尿漏れは事故につながる危険性があるのでお聞きしています。
          義母 にょ、ちょ、ちょっとだけ、あるかな。

          DL 運転の際にはぜひ紙おむつをご使用ください。そっちが気になって、運転がおろそかになると事故につながりますので。
          義母 紙おむつのことまで言われんの!何かそういうの嫌ね!

          DL 申し訳ありません。急にザーッと降ってきた雨を見て、尿漏れした方がいらっしゃったんです。尿漏れに慌てて、赤信号に気づかず、横断歩道の歩行者を何人もはねた方がいらしたんです。それでお聞きしているんです。
          義母 あ、そう、そうなの。その人はどうなったの?

          DL 交通刑務所で服役中です。
          義母 交通刑務所?尿漏れで交通刑務所?

          DL はい、もうすぐ90歳になる方ですが、ご家族から縁を切られました。
          義母 え、縁を……。あ、そ、それでお金はいくらくらいかかるの?納期はいつぐらいなの?

          DL 一般道を自動運転できる時期は、2030年以降、まず10年以上先と思われます。価格は短足なのでペダルの位置変更、それと尿漏れの心配があるので、シートに防水と防臭の加工が必要になります。
          義母 あの、2030年以降なんてあたし、100歳目の前だよ。

          DL いえいえお元気でいらしてください。それと価格はざっくりと見積もって2,000万円はいくでしょう。ではこちら購入申込書です。
          義母 あ、ちょっと、ちょっと待って。2,000万なんて無理よ。息子たちに相談して検討します。

          DL そうですか、では決まりましたらご連絡ください。
          義母 わ、わかりました。きょ、今日はありがとうございました。

          亜子 義母さん、今日申し込みしないでいいんですか。
          義母 あの、い、いいの。は、早合点だったみたい。

          亜子 義母さん、私はこれで帰ります。
          義母 あの、亜子さん、ごめんなさい。これまでひどいこと言い過ぎた、ごめんなさい。

          亜子 この際だからはっきり言いますね。さすがに私も嫌になりました。もう私を頻繁に呼び出さないでください。
          義母 わ、わかった。今までのこと本当に悪かったと思っている。ごめんなさい。

          亜子 じゃ義母さん、これで失礼します。
          義母 あ、あの、亜子さん、お昼でもどうお?あの、亜子さん、ねえ!亜子さん!

          後日談

          私を呼び出さないでと言ったおかげで、義母は少しおとなしくしていました。その間、私は夫の赴任先であるハワイに引っ越しを済ませました。ハワイでの住まいが落ち着いたころ、義母さんから電話がありました。

          亜子 義母さん、こんにちは。
          義母 あの、亜子さん、どこにいるの?

          亜子 逸也さんのいるハワイです。
          義母 ハワイ?何で?

          亜子 義母さん、私こちらに住んでいます。
          義母 え!あたし、そんな話聞いていないわよ。どういうこと?

          亜子 義母さんのことはそろそろいいじゃないかと逸也さんが決めたんです。
          義母 そろそろいいじゃないかってどういう意味?

          亜子 もう面倒見なくてもいいだろうってことです。
          義母 はあ?あたしをほったらかすつもり?

          亜子 いま逸也さんと代わります。
          義母 え、ちょ、ちょっと待って。

          逸也 母さん、姉さんや兄さんに話してあるから、そう心配することないよ。
          母親 逸也!そんなこと言ったって2人とも県外にいるんだよ。

          逸也 だから相談してみてよ。
          母親 随分ひどいじゃないの。

          逸也 おれたちにはおれたちの人生があるんだ。これからは夫婦だけの暮らしをこっちで楽しむよ。
          母親 あんたらひどいわよ!

          その後、義母さんは、義姉さんや義兄さんに「自分の面倒を見てほしい」と頼みましたが、どちらものらりくらりとはっきりしたことを言わなかったようでした。義母さんは民生委員や地域包括に相談し、サ高住に申し込みをして、間もなくそちらに居住する予定だそうです。

                     自動運転の車の話は終わり 次はずっこけな話 ではおみょうにち
          2020.01.17 Friday

          原稿用紙ほぼ3枚分の小説==自動運転の車3の2

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            私はこの件を逸也に相談し、一計を案じました。まず義母を自動車学校に連れていくことにしました。

            亜子 あのね、義母さんが車を買って運転すると言い出したの。
            逸也 さっき、会社に実家近くのディーラーから電話があったんだ。「お母さまからお車の注文があって、名義は息子さんでってことなんですが」って。

            亜子 気が早いね、自動運転の車のコマーシャルを見て免許なくてもいいと思ったらしい。
            逸也 あれかあ、老人を勘違いさせるよな。

            亜子 そんで必要なら自動運転用の免許取るって。
            逸也 そんなのないのになあ。諦めさせる方法がないか調べてみるよ。

            数日後

            亜子 どうだった?
            逸也 実家近くの自動車学校で超シニアコースっていうのがあるそうだ。最近、自動運転の車を運転したいっていう老人がふえたらしい。おおやけじゃないけど、その学校では随分前から70代80代を受け入れない方針だと。入学しても卒業できる高齢者はとても少ないそうだ。

            亜子 そうなんだ。
            逸也 腰が痛い、肩が痛い、雨は嫌だって休むし、学科ではウトウト、技能では「疲れた」「足つった」「膝が痛い」「しょんべんしたい」「くそしたい」ってわがまま言う、屁をブーブーこく、ゲップする、お漏らしする老人もいて、大変だったって。

            亜子 うわあ、すごいことになってんだね。
            逸也 卒業できないもんだから「金目当てだろ!」って文句つける老人が何人もいたので、超シニアコースを設定し、諦めてもらう方法を取っているそうだぞ。

            亜子 諦めてもらう方法ってどんな?
            逸也 入学書類を書いてもらい、視力と聴力、左右を見れるかどうか首の動きの検査、ペダルをきちんと踏めるか足の検査をする。学校近くの病院で血糖値とコレステロール値の検査。これらの検査でほとんどがはねられる。何とかパスした人には自転車を運転させる。不安なくまっすぐ自転車に乗れなければ不合格。

            亜子 病院での血液検査もあるのね。
            逸也 運転中に気を失って事故を起こすケースがふえてるだろ。だからだと思う。

            数日後

            亜子 やっほー。結果報告だよ。学校で揉めて「お帰りください」と言われた。
            逸也 ああ、やっぱりな。

            亜子 視野は欠けていたし、夜間視力は測定不可能。聴力検査も不合格。首は硬くて動かず。糖尿病と高脂血症って診断されて、車の運転どころじゃないとドクターに注意を受けた。足先はペダルをきちんと踏めず。自転車も足が届かず。でも「あたしはうちの子の三輪車には乗れたんだよ!」って頑張ってた。
            逸也 ったく、恥ずかしいよ。

            亜子 担当者が「三輪じゃなく、二輪じゃないとだめなんです」って説明したら「三輪だっていいじゃないの!車はタイヤ4つでしょ!」ってごねた。
            逸也 ああ、まったく。

            亜子 義母さんは頭に来て「自動運転なんだから免許も視力も関係ないでしょ!座っているだけじゃないの!どこだって自動運転できるんでしょ!免許は学校の儲けでしょ!」って大声で怒鳴ったの。
            逸也 ばばあ、切れたか!

            亜子 担当者は呆れて「もう帰ってください」って。義母さんは「こんな悪徳学校なんか、もう来ないよ!ばーか!」って怒鳴って、その日は帰宅した。
            逸也 後で謝罪の電話入れとくよ。

            亜子 んで今度は免許なしで乗れる自動運転の車を探せって。
            逸也 すまん、また面倒をかけるけど頼む。ディーラーにも老人を断る秘策があるらしい。

                         3の2はここまで 3の3はおみょうにち
            2020.01.16 Thursday

            原稿用紙ほぼ3枚分の小説==自動運転の車3の1

            0

              登場人物等
              私は亜子(あこ)。五十路を過ぎた主婦。義母宅から車で20分ほどの賃貸マンションに単身居住中。子なし。義母にこき使われる日々を送っている。大学を出ていないので「学がない、高卒はばか、ものを知らない」と義母に見下されること多々。いつも義母に突然呼び出される。
              夫の逸也(いつや)は会社員。年齢は私の一つ上。ハワイに単身赴任中。
              未亡人の義母は80代後半でひとり暮らし。私をこき使い、学歴をばかにすることに生きがいを感じている。

              亜子 お義母さん、急ぎの用って何でしょう?
              義母 あのね、テレビで自動運転の車を見たの。ハンドル握らないの。それ買おうと思って。

              亜子 義母さん、自動運転でも、免許がないとだめですよ。
              義母 何言ってんの!自動運転なんだから免許いらないでしょ。

              亜子 車は壊れることがあるんです。自動運転の制御システムが動かなくなったとき、ハンドルを握って運転しないといけないかもしれません。そのために免許が必要なんですよ。
              義母 何言ってんのよ。学がないくせに、わかったふうなこと言わないで。

              亜子 でも義母さん、自動運転はまだまだ先の話ですよ。
              義母 あんた、ばかね。日本の技術は優秀なんだから、すぐにどこでも自動運転できるようになるわよ。

              亜子 そうかもしれないけど、それはもっと先の話じゃないですか。
              義母 すぐにそうなるわよ。あんた、知識が足りないわね、学がないと想像力もないのね。

              亜子 すみません、学がなくて。
              義母 とにかく買う。そうしたらあんたに頼まなくて済むし。車を出してもらうのいつも悪いなって思ってたのよ。

              亜子 そうですか……あはは。
              義母 まあ、免許が必要なら自動運転用の免許を取ればいいよね。

              亜子 自動運転用の免許なんてないですよ。
              義母 だってオートマ専用の免許ってあるでしょ。

              亜子 オートマ専用じゃなくて、オートマ限定です。
              義母 似たようなものよ。あんた、悪いけど、車屋さんに自動運転の車のこと聞いておいて。あと、近くの自動車学校に自動運転用の免許のこと確認しておいてよ。

              亜子 はいはい、わかりました、はい。
              義母 「はい」は一回でいいの。何回注意してもだめね、大学出てない子は覚えが悪いわね。

                            3の1はここまで 3の2はおみょうにちに。
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